脂肪滴はほぼ全ての体細胞に認められるオルガネラで、中性脂質貯蔵・膜脂質代謝・エネルギー産生などに密接に関与すると考えられているがその形成過程については不明な点が多い。医学薬学的見地からも脂肪滴は肥満・脂肪肝等の本因であり、その形成メカニズムを知ることは、これらに付随した病態の解析・治療に有用である。そこで、本研究は主に体細胞変異株を用い細胞内脂肪滴の形成メカニズムに重要な因子ついて明らかにすることを目的としている。本年度(平成18年度)はまず、ヒト肝培養細胞より分離した脂肪滴のプロテオーム解析結果を報告した。37種のタンパク質を同定し、脂肪滴には構造蛋白(ADRP、TIP47など)、膜輸送蛋白(Rab蛋白など)、脂質代謝酵素などが多く存在するだけでなく、機能未知のタンパク質も多く同定された。これらの分子が脂肪滴形成に関わっているかもしれない。今後さらに検討していきたい。また、樹立した脂肪滴の形成不全細胞株LDD-1(アセチルCoAカルボキシラーゼ1に欠損を有する)の性状解析も行った。LDD-1株では、diacylglycerol acyltransferaseなどの中性脂質合成に関わる酵素のin vitro活性については変動がみられなかった。このことから、これら酵素の細胞内活性調節機構あるいは細胞内脂肪酸輸送過程等に変動が生じているのかもしれない。加えて、脂肪滴過剰形成変異株の分離も試みた。変異株分離法は、チャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞を用い、通常の10%血清(あるいはリポタンパク質除去血清)存在下で行った。脂肪滴はNile Redで蛍光標識し、その脂肪滴量が多い細胞集団をFACS(セルソーター)で分離した。このスクリーニング操作を繰り返すことで脂肪滴形成が過剰な変異株を濃縮し、クローン化した。現在1株得られている。
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