研究概要 |
Manassantin Bは,Saururus cernuus L.(Saururaceae)より単離された天然物で,がんや脳梗塞,心臓梗塞などの病態と関連があるとされるHIF-1αを強力に阻害し,低酸素状態で誘導されるVEGFの産生を選択的に抑制するこ/とから注目されている,我々は,manassantin Bを新規HIF-1α阻害剤のリード化合物として,誘導体合成に適した基本的合成法を確立し,これを基盤技術として生物学的研究に必要なツールを世に送り出すことを目的に本研究に着手した. 今年度は,昨年度検討を行ったジアステレオ選択的Michael付加反応を鍵反応とする2,5.ジアリール四置換THF骨格のラセミ合成についてまとめを行い,その詳細を学術雑誌に報告した. 次の段階として,前回の合成で課題となった合成/経路の短縮と光学活性体の合成を念頭において,不斉[2,3]-Wittig転位反応を鍵反応とする不斉合成を検討し,鍵反応となるベンジルエーテルの不斉【2,3】-Wittig転位反応を検討した。その結果,外部不斉配位子としてBOX・tBuを用いることで徒来エナンチオ選択性の低かったベンジルエーテルの不斉[2,3]-Wittig転位反応が85-100%eeの高い選択性で進行することを見出した.また,標的天然物及びその誘導体の合成へ応用するため,ベンゼン環上の置換基の置換様式の異なる基質を用いて反応の-般性を確認し,これらの結果を学術、雑誌に報告した.今後,得られた鍵中間体を用いた天然物への変換を検討する予定であり,その基礎を築くことができた.
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