テロメアは真核生物の染色体末端であり、ヒトではTTAGGGの塩基繰り返し配列を持っている。テロメアを伸長する酵素がテロメラーゼであり、腫瘍細胞の85%に活性が見られ、テロメラーゼは細胞の不死化と密接な関係がある。テロメラーゼはテロメア一本鎖構造に結合するが、その一本鎖が四重鎖構造をとるとテロメラーゼはもはやテロメアには結合できず、腫瘍細胞は死滅することが報告されている。テロメア四重鎖を安定化するカチオン性ポルフィリンTMPyP4はテロメラーゼ阻害活性と抗腫瘍細胞活性を示すことがわかっている。そこで私はTMPyP4の4つの類似体pPy、pTm、mPy、mTmがどのようにテロメア四重鎖DNAに結合しているのかを探るために、テロメア四重鎖-TMPyP4類似体複合体の分子ドッキングシミュレーションと分子動力学シミュレーションを行った。TMPyP4類似体の初期構造のモデリングにはMOEを使用し、構造最適化はGaussian03で行った。電荷はRESP法で求めた。反平行グアニン四重鎖DNA構造(PDB_ID:143D)はPDBからダウンロードした。DOCK6.1による分子ドッキングから最安定だと考えられるドッキングポーズを計算させ、続いてGBモデルにて極小化し、続いてAMBER8を用いて4nsの分子動力学シミュレーションを行った。最後の1nsのトラジェクトリを用いてMM-PBSA法により結合自由エネルギーを算出した。分子ドッキングシミュレーション、分子動力学シミュレーションとMM-PBSA法の計算結果から、pPy、pTm、mTmはループに結合し、mPyは広い溝に結合することが示唆された。またパラ置換体よりメタ置換体の方が結合親和性が高いことが示唆され、既に論文として報告している実験データを裏付けるデータが得られた。
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