研究概要 |
我々のグループは、ラット小脳初代培養系を用いて種々のプリン化合物の神経細胞死に及ぼす影響を解析し、新たにアデニンが小脳プルキンエ細胞の細胞死を抑制する効果を有することを見出した(j.Neurosci.Res., 74, 754-759, 2003)。 本研究の当該年度では、このアデニンの新規作用の分子機構の解明を目指し、アデニンの神経細胞死抑制効果を担う可能性を有する一連の受容体の単離を試みた。イオンチャネル型受容体であるP2X受容体を除き、これ迄に発見されたプリン受容体は皆Gタンパク質共役型受容体(GPCR)であることから、アデニンの神経細胞死抑制効果を担う受容体もGPCRである可能性が想定される。そこで、神経細胞で発現している既知のプリン受容体GPCRで保存性の高い膜貫通領域の遺伝子配列を基にしてdegenerateプライマーを設計し、ラット小脳初代培養系においてアデニンの有無で発現に差異のあるGPCR遺伝子を同定することを目指した。 その結果、作成したプリン受容性GPCR特異的degenerateプライマーは、クローニングした既知のラット由来プリン受容体遺伝子5種の全てをPCR増幅することができ、その実効性が示された。この特異的プライマーをラット小脳初代培養からのmRNAに用いた結果、推定増幅サイズの500bp付近に多くの増福DNAが検出されたが、増幅産物量の過多ゆえにアデニンの有無で発現に差異のあるバンドを目視で確認することはできなかった。今後は、発現に差異のあるdegenerate PCR産物を同定するため、TAクローニング法による増幅産物のDNA配列決定、あるいはサブトラクションPCR法を用いた発現差のある遺伝子の検出法などを駆使し、有意差遺伝子の同定作業を進める予定である。
|