研究概要 |
γ-ヒドロキシラクタムをファーマコフォアとして有する抗腫瘍性物質GKK1032A2の不斉全合成について、引き続き検討した結果、デカヒドロフルオレン骨格部位の構築を完了するとともに、γ-ヒドロキシラクタム部位との連結にも成功した。現在、フェニルエーテル結合の構築による13員環化反応について検討しており、近い将来全合成が達成されるものと期待している。 一方、α-アシル-γ-ヒドロキシラクタム構造の一般性の高い構築法として、窒素原子がBoc基で保護されたγ-メトキシラクタム由来のアニオンをアルデヒドに作用させる新規かつコンバージェントな方法の開発に成功した。また、ここで得られたγ-メトキシラクタムに脱酸素剤としてDDQを作用させることにより、α,β-不飽和型のγ-ヒドロキシラクタムを得る方法を見出すことができた。これらの方法により、入手容易なアルデヒドを出発原料として、α位に様々なアシル基をもつγ-ヒドロキシラクタムおよびα,β-不飽和型のγ-ヒドロキシラクタムを得ることが可能となった。 上述の新規合成法の開発に伴い、de novo分子設計に基づく新規セリンプロテアーゼ阻害剤の開発研究に着手することにした。対象となるセリンプロテアーゼとしては、トロンビン等の古典的なものだけでなく、細胞内に存在するアポトーシス関連酵素についても検討する予定である。また、α,β-不飽和型のγ-ヒドロキシラクタム構造をもつ生物活性物質として、HIVインテグラーゼ阻害剤Oteromycin、抗真菌剤Talaroconvolutinの全合成研究にも着手した。現在、分子内Diels-Alder反応を用いたデカリン骨格の構築について検討している。
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