研究課題
基盤研究(C)
我々は、比較的簡単な構造を有するビグアナイド系抗糖尿病薬のメトホルミンが、AMPK(5'-AMP activated kinase)を活性化することで末梢組織での糖利用を促進し血糖値を降下することに着目し、メトホルミンの薬理作用発現にはビグアニジン基が重要であるとの考えから、ある種のマメ科植物が含有する血糖降下作用を有するルピン系アルカロイドの構造中に、ビグアニジン基を導入した化合物の合成と評価を行ってきた。しかし、中程度の血糖降下作用を有する数種の化合物を見出すに過ぎなかった。そこで本研究では、糖尿病の進行とともに観察される血管内皮細胞障害の改善に有効な、抗酸化作用を有するトコフェロール類の構造をヒントに、クロマン骨格にビグアニジン基を結合した化合物の合成と血糖降下作用の評価から新たな糖尿病治療薬、さらには肥満改善薬につながる化合物の探索を計画した。目的化合物の合成では、クロマン骨格の一般的な合成法であるハイドロキノン類と、ビニルアルコール類とのFriedel-Crafts反応にて収率良くトコフェロール様化合物の第一級アミン誘導体を得た後、これにジシアンジアミドを反応させることで、炭素鎖2〜5個の間隔でビグアニジン基を結合させた一連の誘導体を合成した。次に、得られた化合物を用いた糖負荷マウスによる血糖降下作用の評価を行ったところ、トコフェロール部位とビグアニジン基を隔てる炭素鎖数が2個ないし3個の化合物にビクアナイド系糖尿病薬であるメトホルミンを凌駕する強力な血糖降下作用を有することを見出した。今後、血中インスリンの定量や、血管内皮細胞の機能変化の観察などを行い、AMPキナーゼ活性化作用に由来する強力な血糖値降下作用を有する化合物を発見し、新たな糖尿病治療薬、さらには肥満改善薬につながる化合物の探索を行う予定である
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Biol. Pharm. Bull. 29・10
ページ: 5
Bioorganic & Medicinal Chemistry, 14・17
ページ: 8