研究概要 |
本研究は,ビグアナイド系抗糖尿病薬のメトホルミンがAMPキナーゼの活性化にて末梢組織での糖利用を促進し血糖値を降下することに着目し,これに抗酸化作用を有する構造を組合せた化合物を合成することで,血管内皮細胞防御効果と共にAMPキナーゼ活性化作用に由来する血糖値降下作用を持ち合わせた新たな化合物の創製を目的としている。19年度前半では,抗酸化作用を有する構造にトコフェロールをヒントに,クロマン骨格を導入した化合物の合成と血糖値降下作用の評価を行った。目的化合物は,クロマン骨格の一般的な合成法であるハイドロキノン類と,ビニルアルコール類とのFriedel-Crafts反応を用いてトコフェロール様化合物を得た後,これにジシアンジアミドを反応させることで達成した。ここに合成した化合物は,クロマン骨格に炭素鎖2〜5個でビグアニジン基を結合させたものであるが,これらの血糖値降下作用の評価では,炭素鎖2個の化合物にメトホルミンを凌駕する強力な血糖降下作用があることを見出した。また19年度後半では,抗酸化作用を有する部位としてブチルヒドロキシアニソール誘導体を有する化合物の合成と評価を行った。標的化合物の合成は,アリルエーテルのClaisen転移,Hydroboration,Gabriel合成を順次行い第一級アミンを得た後,ジシアンジアミドを反応させて合成した。今回合成した化合物は炭素鎖3個の誘導体のみであるが,本化合物はトコフェロール誘導体よりも強力な血糖値降下作用を有していた。今後炭素鎖の異なった化合物の合成と評価を行い,より強力な作用を有する化合物の探索を行う予定である。
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