研究概要 |
アスパルティッタプロテアーゼ阻害剤の設計は,基質遷移状態概念誘導体を基質の切断部位に組み込み,これを基に構造変換を行って,強い活性及び薬物として必要な物性を有する化合物を見いだすといった手法が一般的である.我々は従来から遷移状態ミミックとしてhydroxyraethylcarbonyl(HMC)が有用であり,かつユニークな相互作用をもたらすことを示してきた.実際にHTLV-Iプロテアーゼの基質部位p19/p24に相当するオクタペプチド(PQVL*PVMH)にHMCを導入し,多少の構造変換を行った化合物KMI-10162はHTLV-Iプロテアーゼ阻害活性を有していた.そこでこの化合物をリードに,膜透過性を上昇させるようなデザインを行って阻害剤を合成することとした. 1 阻害剤の低分子化オクタペプチド型の阻害剤KMI-10162では,分子サイズが大きすぎ薬物として不適であることは明白である.しかし安易な低分子化は極端な活性低下をもたらすので,ヘキサペプチド相当の分子を当面のターゲットとする.この分子のP3,P2,P2'及びP3'部位を構造変換することで強い活性を有するリード化合物を見いだした. 2 P3の構造変換上記によって得たリード化合物のP3部位の修飾を行なって物性の改善,特に親水性の向上を目指した.P2部位は比較的小さめの疎水性ポケットと言われているのに対し,P3部位は酵素の外部に面しており,親水性の官能基を導入した場合でも活性の低下を最小限で押さえられる可能性がある.またS3サブサイトはHIVの場合と比べてHTLV-Iではアミノ酸置換が見られる.その為,HIVプロテアーゼ阻害剤とは異なるデザインで合成した. 3 P3'の構造変換レトロウイルスのプロテアーゼはC2対称であるため,S3およびS3'サブサイトは基本的に同一である.よって2)と同様の考えに基づきP3'のデザイン,合成を行った.
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