研究課題
基盤研究(C)
臭素化難燃剤はパソコン、テレビを始めとする家電品あるいは建材の難燃剤として広く使用されている。環境への残留性からダイオキシンにかわる新らたな残留性汚染物質として注目されている。実際に、ヒトあるいは野生動物の体内から臭素化難燃剤あるいはその代謝物が検出されている。その中には、臭素化難燃剤の毒性の一役を担っている活性代謝物も存在すると考えられている。一方、これらの化合物の代謝物の中には.甲状腺ホルモンとの構造類似性が見られることから、甲状腺ホルモン作用を撹乱する可能性が考えられる。そこで、プロム化難燃剤として、polybromodiphenyl ether(PBDEs)を取り上げ、甲状腺ホルモンレセプターと親和性をbinding assayおよびレポーターアッセイ系を用いて検討した。また、in vivoでの影響評価として、オタマジャクシからカエルへの変態を指標とした検討を行った。その結果、甲状腺レセプターに対して、代表的なプロム化難燃剤であるtetrabromobisphenol A(TBBPA)およびいくつかの水酸化PBDEsは強固に結合することを見出した。また、下垂体細胞GH3の増殖および成長ホルモンの分泌を促進し、アゴニスト作用が見られた。さらに、甲状腺ホルモンレセプターとの親和性の構造的要因を検討した結果、4位に水酸基および3,5位にプロム基が必須であった。一方、甲状腺ホルモンはオタマジャクシの変態を促進することが知られている。そこで、オタマジャクシからカエルへの変態(尾の短縮および手足の伸長)を利用して、これらの物質の甲状腺ホルモン撹乱作用を検討した結果、TBBPAおよびいくつかの水酸化PBDEsは甲状腺ホルモンによる変態の促進を著しく阻害した。
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