研究概要 |
平成18年度は、主に摂餌を介してグリセオフルビン(GF)を摂取するマウスのヘム代謝異常に関する性状解析を中心に行った。 GF含有食(0.5%,2.0%)を摂食したマウスは対照(高炭水化物食)マウスに比べて、7日目に最大値を示す糞中ポルフィリン(コプロポルフィリンIII、プロトポルフィリンIX)量の増大が観察された。また、GF用量依存的に肝肥大および肝障害が観察されたほか、高用量GFを摂取した群では顕著な体重の減少と耳介の炎症も観察された。ヘム前駆体の蓄積やそれに伴う肝障害の発現は、ポルフィリン症に特徴的な症状であり、マウスを用いたポルフィリン症モデルの作出ができたと考えている。GFによる急性障害と慢性障害では、糞中ポルフィリン量(急性期に著明な上昇)や肝障害マーカー活性(急性期には肝細胞傷害性、慢性期には胆汁うっ滞など)の変動に大きな違いがあることから、時期依存的な病態および症候を検討する必要性が考えられた。さらにこれらの動物を用いて、ポルフィリン症に見られる精神神経障害を評価する試みの一つとして、運動機能について検討した。その結果、GF摂取群では対照群に比べ、3-5週間で有意に自発運動量の低下が認められた。筋肉細胞の組織学的検討では、末梢神経系の脱落および筋肉細胞の変性などは確認されなかった。以上の結果は、ポルフィリン症モデルマウスにおいて、行動に対する中枢性制御の変化が起きていることを想起させるものである。今後は、これらの動物モデルを用いて概日リズム性の検討を行う予定である。
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