研究概要 |
プラスチック可塑剤として最も多量に用いられているフタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジブチル、およびそれらの代謝体であるフタル酸ジエチルヘキシル(MEHP)、フタル酸モノブチルのヒトエストロゲン合成酵素発現に及ぼす影響とその作用機構解明を目的として研究を行い以下の結果を得た。 1)ヒト由来ステロイド産生細胞NCI-H295Rを用いて、エストロゲン産生、アロマターゼ活性および転写への影響を検討した結果、MEHPが特異的および濃度依存的にエストロゲンの産生の抑制、アロマターゼ活性の抑制、アロマターゼ遺伝子mRNAの低下、組織特異的プロモーターIIの発現抑制、およびプロモーターIIの転写活性化を抑制した。2)MEHP暴露により、オーファンnuclear receptor NR4A familyであるNur77,Nurr1およびNOR-1が短時間で一過性に上昇した。3)MEHPによるNur77の発現はPKCインヒビターおよびPI3Kインヒビターにより抑制された。 4)NR4Asはearly response geneとして知られ、種々遺伝子の転写活性の調節に関与している。そこで、NR4Asのアロマターゼ遺伝子の転写調節への影響を検討するために、NCI-H295R細胞ヘアロマターゼプロモーターIIのレポーターベクターとNR4Asの発現ベクターをコトランスフェクトして、プロモーターII活性に及ぼすNR4Asの発現の影響を検討した。その結果、NR4Asの発現によりアロマターゼプロモーターIIの転写活性化は濃度依存的に抑制された。5)Nur77のプロモーター活性に及ぼすMEHPの影響を検討する目的で、Mur77プロモーター領域を含むレポーターベクターを作成し、NCI-H295R細胞にトランスフェクトして、Nur77の転写活性化に及ぼす影響を検討した。その結果、MEHPはNur77の転写活性化を促進した。
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