研究概要 |
TNF-αおよびアディポネクチンによるプロテオグリカン合成の調節を検討するために,培養血管平滑筋細胞をTNF-αあるいはアディポネクチン存在下,[^<35>S]硫酸で代謝標識し,細胞層と培地に蓄積したプロテオグリカンの特性を解析した。 1.TNF-αが血管平滑筋細胞のプロテオグリカン合成を以下のように調節することが明らかになった。(1)コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの大型分子種バーシカン(V0およびV1バリアント)コア蛋白の合成を誘導する。(2)そのコンドロイチン硫酸糖鎖の伸長を抑制する。(3)コンドロイチン硫酸糖鎖の二糖組成を変化(GlcA-GalNAc(4S)の選択的増加)させる。これらは特に細胞密度が高い場合に細胞傷害性や蛋白合成の全体的な上昇をともなうことなく起こった。 2.アディポネクチンが血管平滑筋細胞のプロテオグリカン合成を以下のように調節することが明らかになった。(1)デルマタン硫酸プロテオグリカンの小型分子種デコリンのコア蛋白合成を選択的に誘導する。(2)そのグリコサミノクリカン糖鎖の伸長には影響を及ぼさない。(3)しかしながら,そのデルマタン硫酸糖鎖のグルクロン酸の割合を増加(イズロン酸の割合の減少)させる。これらは細胞密度に非依存的に起こった。 以上の結果より,TNF-αによるプロテオグリカン合成の調節は,動脈硬化病変の進展に係るバーシカンの量的増加と構造の変化,およびそれに基づく血管平滑筋細胞の機能異常に寄与するものと推察される。一方,アディポネクチンによる,血管平滑筋細胞プロテオグリカン合成の調節は,その抗動脈硬化作用に含まれることが示唆された。
|