研究概要 |
京都市内住宅地域の表層土壌の変異原性質による汚染状況を明らかにするため、12地点から2回もしくは3回、表層土壌を採取し(合計25試料)、抽出物についてエームス試験を行った。その結果、大部分(約92%)の試料がTA98株に対し変異原性を示し、8試料(32%)は強い(1,000〜10,000revertants/g土壌)もしくは非常に強い(>10,000revertants/g土壌)活性を示した。土壌中の変異原物質の構造を明らかにするため、変異原物質による汚染が著しくかつ継続的であると考えられた地点から表層土壌を採取し、抽出物をソックスレー抽出法により得た。TA98株に対する変異原性を指標として抽出物を各種カラムによるクロマトグラフィーで分画し、5種類の変異原物質を単離した。各変異原物質は、標準物質を用いたHPLCにおける保持時間、UV吸収スペクトルなどの結果から、1,6-ジニトロピレン(DNP)、1,8-DNP、1,3,6-トリニトロピレン(TNP)、3,9-ジニトロフルオランテン(DNF)及び3,6-ジニトロベンゾ[e]ピレン(DNBeP)と同定した。これらニトロアレーンの土壌抽出物の変異原性(TA98、S9mix非存在下)に対する寄与率はそれぞれ3、10、10、10及び6%であった。強い変異原性を示した大阪府高槻市、同泉大津市、愛知県名古屋市及び同碧南市の表層土壌抽出物について同様の検討を行った結果、上記5種類のニトロアレーンが各土壌抽出物中の主要な変異原物質として検出された。 以上の結果から、京都市の住宅地域は広く変異原物質により汚染されており、汚染状況が著しい箇所が存在することがわかった。また、1,6-DNP、1,8-DNP、1,3,6-TNP、3,9-DNF及び3,6-DNBePが京都市及びその他地域の主要な表層土壌汚染物質であると考えられた。
|