ヒト腸管上皮細胞Caco-2細胞を用い、SEp22を発現する親株とsep22遺伝子欠損変異株KO-5株を感染させた。その結果、感染菌量(MOI)を20-200まで変化させて4℃、1時間における菌の接着を調べた結果、常にKO-5株の方が-高い接着性を示した。この結果はマクロファージ系細胞株J774.1/JA-4細胞に対する接着とほぼ同様の結果であった。次に、上と同様にMOIを変化させてCaco-2細胞にサルモネラを4℃、1時間接着させた後に37℃でさらに1時間培養して細胞内に取込ませた結果、MOI=20-100までは両菌株で同様の取り込みを示したがMOI=200では親株の方がKO-5株よりも有意に高い取り込みを示した。以上の結果から、SEp22はCaco-2細胞への菌の接着に対しては抑制的に作用するが、細胞内への取り込みには積極的な関与をすることが示唆された。 さらに、病原因子であるSEp22の発現を調節する培地中の成分に関する研究を行った。その結果、富栄養のLB培地中の成分と同様、カサミノ酸の高分子の分画中の成分が選択的にSEp22を誘導することが明らかになった。さらに、サルモネラがヒトやマウスの腸管のバリアーを突破する際に遭遇することが予想される好中球やマクロファージの産生する活性酸素分子種がSEp22の発現に及ぼす影響を調べた。その結果、次亜塩素酸、過酸化水素、一酸化窒素、ペルオキシナイトライト(ONOO-)のうち、過酸化水素だけがSEp22を発現誘導することが示された。 以上の結果をもとに、今後はマウスを用いたループ結紮法によって、SEp22発現株と非発現株の腸管透過性を評価する予定である。
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