研究概要 |
本年度は、まず、サルモネラの増殖に伴うsep22遺伝子の発現の変化をRT-PCRで解析した結果、静止期で高い発現をしていたものが対数増殖期初期で急速に減少し、増殖に伴って再び漸増し、培養開始6-8時間後にピークとなり、その後やや減少した。これに対し、サルモネラのIII型分泌機構(TTSS)を構成する病原因子invAのmRNAは、静止期で低く、増殖に伴って対数増殖期初期で急激に上昇し培養開始1-2時間後にピークとなりその後減少した。このように、宿主への感染における攻撃因子であるinvAと宿主の免疫系からの攻撃に対する防御因子と考えられるsep22とは、菌の増殖期における発現変化が著しく異なることが明らかになった。一方、sep22遺伝子欠損変異株の1つ, KO-5株にsep22の遺伝子を導入したrevertantsの作成を試みたが、安定な形質変換を示す株を分離することができなかった。現在、異なるベクター系を用いて再度試みている。 次に、サルモネラのSEp22のタンパク質レベルでの発現誘導に関与する食品成分を解析した結果、LB培地、ウシ胎児血清、卵黄、キャベツ抽出物などに含まれる種々のタンパク質、ペプチドに活性が認められた。カゼイン分解物であるカサミノ酸からゲル濾過、HPLCなどによってさらに分析を行い、特定の分画に含まれるポリペプチドにSEp22の誘導活性が見られることが示された。 また、Caco-2細胞への接着性と侵入性において、SEp22タンパク質の発現の有無はあまり大きな差を示さなかったが、マクロファージへの感染では、接着はSEp22欠損変異株(KO-5)の方がやや高いものの侵入性は低かった。その原因を示唆するものとして、新たに、マクロファージ細胞表面でKO-5株の分裂が抑制されて繊維状に長くなり、細胞へ侵入できない像が観察された。
|