本研究では、含窒素有機化合物から様々な反応によりシアンが生成する機構の解明を目的として、生体試料や食品試料を対象として、活性酸素に焦点を当てて、的確な分析化学的手法を武器としてシアン生成機構を明らかにする。 1.シアン定量法の確立 ポーラスポリマーキャピラリーカラム(メガボアGS-QまたはHP PLOT Q)を分離カラムとし、窒素リン検出器を用いたガスクロマトグラフィー(GC)(GCスプリット注入5:1、カラム温度120〜140℃、He流速5ml/min)法に、前処理としてスタティックヘッドスペース(HS)法を採用して、ng/mlレベルの濃度領域での定量が可能であり、血液、食品試料マトリックスの妨害影響を受けないシアンの定量法を確立した。HS平衡条件としては、酸性条件下50℃、30分加温を基本とした。 2.チオシアン酸からのシアンの生成 チオシアン酸(SCN、1mM)に強酸性(10%リン酸)条件下、過酸化水素、ハイドロパーオキシドラジカル、亜硝酸(mMレベル)を作用させると顕著なシアンの生成(数〜数十μM)が確認されたが、弱酸性(酢酸緩衝液pH5.2)条件下ではシアン生成量は低かった(1μM以下)。強酸性条件下、亜硝酸(mMレベル)は血清(75%)やオキシヘモグロビン(0.7mM)と反応してシアンを生成し(サブ〜十数μM)、アジ化物(mMレベル)はオキシヘモグロビンと反応してシアンを生成した(数μM)。
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