1.シアン定量法:ポーラスポリマーキャピラリーカラムを分離カラムとし、窒素リン検出器を用いたガスクロマトグラフィー法に、前処理としてスタティックヘッドスペース法を採用して、ng/mlレベルの濃度領域での定量が可能であり、試料マトリックスの妨害影響を受けないシアン定量法を確立した。 2.チオシアン酸からのシアンの生成:チオシアン酸に強酸性条件下、過酸化水素、ハイドロパーオキシドラジカル亜硝酸 (mMレベル)を作用させると顕著なシアンの生成(数〜数十μM)が確認されたが、弱酸性(酢酸緩衝液pH5.2)条件下ではシアン生成量は低かった(1μM以下)。 3.食品試料からのシアンの生成:市販インスタントコーヒー、ウーロン茶から50mM亜硝酸共存でリン酸酸性下1.2mg/mL、2.9mg/mL、酢酸酸性下0.4mg/mL、0.5mg/mLのシアンが生成した。天然カテコールであるクロロゲン酸、カフェイン酸、カテキン、エピカテキン、タンニン酸、ガーリック酸、L-エピネフリンから、50mM亜硝酸共存でシアンが生成し、0.75mMにおいて1.7〜3.4mg/mL(リン酸)、0.6〜4.5mg/mL(酢酸)であった。同様に、人工カテコールから、50mM亜硝酸共存でシアンが生成し、0.75mMにおいて0.5〜6.7mg/mL(リン酸)、0.1〜15mg/mL(酢酸)であった。シアン生成量は、カテコール化合物濃度、亜硝酸濃度、時間、pH依存性であった。シアン生成は、吸光光度法により確認された。 4.結論:体液中に含有されるチオシアン酸や化学構造上窒素を含有しないポリフェノール類と亜硝酸は酸性条件下反応し、シアンを生成することが判明し、条件が整えば中毒濃度にも達する場合もあり、注意を要する。
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