研究概要 |
薬物の代謝は,医薬品の作用部位への到達性および滞留性を決定する薬物動態関連因子の一つである。さらに,代謝活性化や薬物-薬物間相互作用による副作用発現,遺伝子多型や酵素誘導による薬効発現の個人差の原因でもあり,薬物代謝の予測は極めて重要な課題である。しかしながら,主要な薬物代謝酵素だけでも数十種類にも及び,これらの酵素と薬物が如何に相互作用するかを整理し,薬物を化合物としてみた場合に如何なる構造的特徴がその相互作用と関係するかを見出すことは解析に極めて困難を要する。これまでにも薬物代謝学のエキスパートによる情報整理が進められてきたが,過去の構造活性相関研究は対象データの規模が小さく包括的な解析とは言いがたい。そこで本研究では,薬物代謝に関する構造活性相関の知識体系化を最終的なゴールとして,以下に示す2つの技術的な課題について取り組んだ。一つは薬物と代謝酵素との相互作用に関する情報の網羅的な収集であり,もう一つは得られた情報の分類と整理する方法論の開発である。前者に対しては,過去の文献を網羅的に解析し,必要な薬物代謝関連の情報を自動的に収集できるテキストマイニング法を開発した。ここでは,自然言語処理解析に基づいて,目的とする情報をテキストから収集するために不可欠な,化合物辞書および相互作用辞書の作成,構文解析のためのルールベースの構築を行った。後者の取り組みに対しては,複数の代謝酵素に関する多次元の情報を統一的に解析するために,得られたカテゴリーデータを同時に取り扱い,包括的に構造活性相関解析を行う新規のアルゴリズムを考案した。これらの方法は,医薬品探索研究の合理的推進に対して多いに貢献するものと期待される。
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