研究課題/領域番号 |
18590141
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
合葉 哲也 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00231754)
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研究分担者 |
黒崎 勇二 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (90161786)
川崎 博己 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60125151)
小森 有希子 岡山大学, 薬学部, 技術職員 (80379734)
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キーワード | 腹膜透析 / トルブタミド / タンパク結合 / 分布容積 |
研究概要 |
経口投与薬物の血中濃度推移は、腎障害患者において大きく変動することが知られている。この主な要因として、生体異物に対する消化管の吸収障壁機能が低下して薬物の吸収率が上昇することや、薬物代謝活性に起因する全身クリアランスの低下が考えられているが、その詳細については未だ不明な点が多い。研究初年度の平成18年度において我々は、先ず、腎障害時における経口投与薬物のアベイラビリティを精密に測定することを目的に、実験的に急性腎不全を惹起した病態モデルラットにおける薬物の血中濃度推移を正常ラットを対照に比較検討した。モデル薬物には、臨床上腎不全患者が服用することの多い経口糖尿病治療薬トルブタミドを用いた。検討の結果、腎障害群における薬物血中濃度は対照群に比べ低下する傾向が認められ、また薬物速度論の手法により算出したトルブタミドの分布容積には、腎障害群での増大が示された。一般に、分布容積の変動は薬物の血漿タンパク質に対する結合率と強く関係するとされている。このため次に我々は、トルブタミドのタンパク結合率と分布容積の相関を精査した。トルブタミドのタンパク結合率をサルファ剤併用により著しく抑制した条件を設定し、遊離形トルブタミドの血中濃度推移を評価したところ、正常ラットでは、タンパク結合率の低下に伴う血中遊離形トルブタミド濃度の上昇が示された。一方、腎障害ラットでは、タンパク結合率の変化に関わらず血中の遊離形薬物濃度はほぼ一定であった。一般に、トルブタミドのように組織移行性が低い薬物の場合、タンパク結合率の変動が遊離形薬物の血中濃度推移に反映され易いと考えられている。しかし今回我々が示したように、腎障害群ではこのような関係は成立しない。この要因は現在のところ、腎障害に伴って薬物の組織移行性が増加し、薬物分布容積が増大するためであると思われる。現在、腎障害時に組織移行性が増大するメカニズムの解明を目的に、種々の検討を継続して行っている。
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