研究概要 |
我々は肝炎治療のために肝実質細胞への選択的なsiRNAのデリバリーを企図して、ポリアミドアミンデンドリマー(ジェネレーション2,G2)とα-シクロデキストリンとの結合体(α-CDE(G2))にラクトースを複数個導入した種々のラクトシル化α-CDE結合体(Lac-α-CDE(G2))を構築し、その化学構造、物理化学的性質、ガラクトース認識レクチンとの結合性、ヒト肝がん由来細胞であるHepG2細胞における取り込み、細胞傷害性について検討した。その結果、我々が調製した5種のLaC-α-CDE(G2)中のラクトース残基の平均置換度(DSL)を^1H-NMRスペクトルの積分値から求めたところ、それぞれ1.2,2.6,4,6,6.4,10.2であることが分かった。これらLac-α-CDE (G2)は極めて水溶性で、生理的pHにおいて正のζ-電位を示した。これらLac-α-CDE(G2)の中で、Lac-α-CDE (G2,DSL2.6)が、最も高いトランスフェクション効率を示すとともに、そのトランスフェクション効率は、HepG2細胞表面に発現するアシアロ糖蛋白質レセプター(AGPR)に対する競合阻害物質であるアシアロフェツイン(AF)の添加により、顕著に低下したが、陰性コントロールタンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)添加の影響は受けなかった。また、AGPRを発現していないA549細胞では、そのトランスフェクション効率に対するAFおよびBSA添加の影響はみられなかった。これらのことから、Lac-α-CDE (G2,DSL2.6)は肝実質細胞上のAGPRを介して細胞内に取り込まれることが示唆された。このことを裏付けるように、表面プラズモン共鳴装置を用いた検討から、Lac-α-CDE (G2,DSL2.6)はガラクトースレクチンであるピーナッツレクチンと強く結合し、その会合定数はα-CDE (G2)の約100倍高いことが示された。さらに、Lac-α-CDE (G2,DSL2.6)の細胞傷害性は、市販の肝細胞選択的な遺伝子導入試薬であるJetPEI-hepatocyteに比べて極めて低かった。これらの結果から、Lac-α-CDE (G2,DSL2.6)は肝実質選択的な核酸医薬用キャリアであることが示唆され、平成19年度ではin vitroおよびin vivo RNAi効果について詳細に検討する予定である。
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