研究課題/領域番号 |
18590146
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
足立 哲夫 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40137063)
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研究分担者 |
原 宏和 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30305495)
山田 晴生 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (70230472)
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 助手 (60453057)
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キーワード | スーパーオキシドジスムターゼ / アディポネクチン / 腫瘍壊死因子 / 脂肪細胞 / 腎尿細管細胞 / 酸化ストレス / 糖尿病 / インスリン抵抗性 |
研究概要 |
生活習慣と社会環境の変化に伴って、インスリン抵抗性・糖尿病患者が急速に増加している。糖尿病は動脈硬化性合併症の発症・進展を促進し、患者のQOLを著しく低下させるのみではなく、医療経済学的にも大きな負担を社会に強いることになる。脂肪細胞や腎尿細管細胞を用いたin vitro培養細胞系を用い、インスリン抵抗性の発症・進展と酸化ストレス防御酵素やアディポサイトカインの発現変動との関係について検討した。 1、脂肪細胞実験系:3T3-L1マウス前駆脂肪細胞において、EC-SOD(酸化ストレス防御酵素)やAPN(アディポネクチン:抗炎症性アディポサイトカイン)の発現は分化に伴って増加するものの、その後の肥大化の過程では減少した。一方、TNF-α(腫瘍壊死因子:向炎症性アディポサイトカイン)の発現は肥大化に伴って急激に上昇した。分化した脂肪細胞にTNF-αを添加した場合、EC-SODやAPNの発現は低下した。肥満脂肪組織においてはマクロファージが浸潤し炎症性病態を惹起することが報告されているため、3T3-L1細胞とマクロファージの共培養を行ったところ、APNの発現は低下し、TNF-αの発現は上昇した。以上の結果から、TNF-αの発現の上昇が酸化ストレス防御能を減弱化し病態悪化につながっていることが明らかになった。 2、腎尿細管細胞実験系:腎尿細管病変の進行する過程において慢性的虚血状態に曝されている。COS-7細胞を低酸素状態においた結果、細胞内活性酸素の産生量は増大し、EC-SODの発現は低下した。また、これらの変化は抗酸化剤であるtoroloxの前処理により顕著に抑制された。 以上の結果から、血管系の重要な酸化ストレス防御酵素であるEC-SODの脂肪細胞や腎尿細管細胞での発現の低下が糖尿病並びに合併症である腎症の発症や進展に関わっていることが判明した。この培養細胞モデル実験系を活用し、次にEC-SODの発現を充進するような化合物の探索研究に繋げる予定である。
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