研究概要 |
glycerolトランスポーター群の機能解明の手がかりを得る目的で,細胞の分化誘導剤として知られるbutyrateがHCT-15細胞でのglycerol取り込みに及ぼす影響を検討した.常法に従ってHCT-15細胞を24h培養した後,butyrate処理として,sodium butyrate(2mM)を添加した培地を用いてさらに24h培養した.このbutyrate処理を行ったHCT-15細胞でのglycerol取り込みは,非処理細胞での取り込みの約5倍に増大した.また,この取り込み増大は最大輸送速度の上昇によるものであり,ミカエリス定数(親和性)への影響はほとんどなかった.Na^+依存性及び類似薬物等による阻害特性という点でも,butyrate処理細胞でのglycerol輸送特性は非処理細胞での特性と同様であり,非処理細胞で機能しているトランスポーターが誘導されたものと考えられた.さらに,butyrate処理時の培地にactinomycin D(遺伝子転写阻害剤)あるいはcycloheximide(タンパク合成阻害剤)を添加することにより,取り込み増大効果はほぼ完全に抑制された.これらの結果は,glycerol取り込みに関わる特異的輸送担体タンパクが存在するという説を支持するものである.また,そのタンパクがbutyrateによって誘導されるタイプのものであることを示唆するものである. glycerolトランスポーター群の機能特性をさらに明らかにしつつ,分子実体の同定のための手がかりを得ることを目指して,現在,HCT-15細胞のglycerolトランスポーター機能に対するプロテインキナーゼ介在性調節機構の関与の可能性について検討を進めているところである.
|