本研究では、非侵襲的な方法による薬の体内動態、薬効・副作用の予測システムの開発を目指している。特に末梢血リンパ球に着目し、排泄型トランスポーターの網羅的遺伝子発現レベルとその調節機構を解明し、遺伝子レベルから体内動態、薬効・副作用の予測評価を目指している。病態モデルとしては、LPS投与による感染症ラットを対象にした。LPS単回投与により回腸および肝臓におけるmdrla mRNA発現量は正常(CTRL)群に比して低値を示し、この値はLPSの連続投与により回復傾向を示し、5日間投与においてはCTRLレベルに回復した。一方、リンパ球中のmdrla mRNA発現量はLPS単回投与によりCTRL群と比較し高値を示し、5日間投与群ではCTRLレベルに収束した。以上より、病態初期のリンパ球中のmdrla mRNA発現の上昇は、回腸および肝臓でのmdrla mRNAレベルの低下を補うための誘導と考えられる。この考察は5日間投与群において、回腸、肝臓、リンパ球いずれのmdrla mRNA量とも、CTRLレベルに収束したことから妥当であると言える。さらに、リンパ球中のPXRの挙動はリンパ球中のmdrla mRNAの挙動と類似していることから、リンパ球中のmdrla mRNAも核内レセプターに制御されていることが示された。回腸におけるmrp2 mRNAおよびbcrp mRNA発現量を測定したところ、LPS単回投与によりCTRLに比して低値を示した。この値は、mdrla mRNAレベルの挙動と同様に連続投与により回復傾向を示し、5日間投与においてはCTRLレベルに達した。リンパ球中のmrp2 mRNAの挙動はmdrla mRNAの挙動と類似していたが、bcrp mRNA発現量には変動は見られなかった。
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