過活動膀胱に対する新しい治療薬の有力な標的蛋白に位置づけられているβ_3-アドレナリン受容体(β_3-受容体)と電位依存性カルシウム感受性Kチャネル(マキシKチャネル)に着眼し、両者の機能的共役の可能性を検証し、その分子基盤を構築するために、モルモット・マウス膀胱標本を用いた基礎的検討を行うとともに、膀胱以外の平滑筋、特に、血管との比較検討を行った。 1 モルモット大動脈平滑筋のβ-受容体を介した弛緩反応の研究に着手し、イソプレナリンにより内皮に依存しない強力な弛緩反応が誘発されることを初めて見出した。また、この反応にtachyphylaxisが存在することも明らかにした。現在、弛緩反応に関与するサブタイプの薬理学的解析を行うとともに、受容体の遺伝子解析にも着手した。さらに、モルモットのβ_3-受容体とマキシKチャネルの発現系細胞を用いた実験系の確立に向けた準備も進めている。 2 マキシKチャネルのβ_1-サブユニットノックアウト(β_1^<-/->)マウスを用いて、イソプレナリンとノルアドレナリンによるβ_3-受容体を介した膀胱平滑筋の弛緩反応を検討し、β_1^<+/+>マウスと比較してβ_1^<-/->マウスにおいてその反応が減弱していることを見出した。 3 麻酔下モルモットにおいて、(1)バルーン法と(2)シストメトリー法による膀胱運動の評価系を確立し、コリンエステラーゼ阻害薬による膀胱運動の増強効果の作用機序を明らかにした。ただし、現在のところ、β_3-受容体活性化薬の抑制効果については、顕著な結果を認めるには至っていない。
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