研究概要 |
本研究の目的は、大腸内視鏡検査において、大腸粘膜内に留まる転移リスクのない発生初期の大腸癌をリアルタイムで診断し、内視鏡下で切除することを可能にする世界初の大腸内視鏡検査用造影剤を創製することである。造影剤は、大腸癌細胞粘膜側の特異抗原Thomsen-Friedenreich抗原め末端糖鎖β-D-galactosy-(1,3)-N-acetyl-D-galactosamine(Gal-β(1-3)GalNAc)を認識するピーナッツレクチン及び正常部位との非特異的相互作用を抑制するポリN-ビニルアセトアミドを表面に固定化し、蛍光性のクマリレ-6を内包したサブミクロンサイズの高分子性微粒子である。本造影剤と各種大腸癌細胞をin vitroでインキュベートした結果、造影剤の結合に基づく強い蛍光が細胞から確認された。ヒト小腸上皮細胞では、細胞に付着した造影剤に由来する蛍光は非常に弱かった。このことから、造影剤は細胞表面に露出したGal-β(1-3)GalNAcを認識し、癌細胞に結合したと考えられた。ヒト大腸癌由来細胞のHT-29を用いて、大腸粘膜側に大腸癌が発現した同所移植モデルを作成した。同マウスを用いて、造影剤のin vivoでの有用性を検討した。造影剤投与・洗浄後の大腸粘膜表面を蛍光顕微鏡で観察した結果、造影剤由来の強い蛍光が大腸粘膜上の特定個所に集積していることが確認された。さらに、同様の検討を正常マウスで行った結果、造影剤の粘膜への付着・集積はほとんど認められなかった。初期データではあるが、in vivoにおいて、本造影剤を用いた蛍光発光に由来する癌組織(明部)/正常組織(暗部)の蛍光コントラストに基づく大腸癌診断(イメージング)の可能性が示された。今後、「蛍光発光部位=癌の粘膜浸潤部位」であることを証明するための病理所見等を行う予定である。
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