研究概要 |
ビタミンK3は、投与量依存的に肝癌細胞(Hep G2)に障害を与え、そのIC50は13.7μMと既存の抗癌剤に比較したらやや低い殺細胞効果を示した。そのメカニズムとして別冊に添付したアクセプト英文論文にも記した如く、細胞周期のS期を短縮し、G2/M期を投与量依存的に延長するという注目すべき知見を得た。生化学的検討の結果、ビタミンK3は、cyclinA/cdk1とcyclinA/cdk2コンプレックスの増加を惹起するとともに、cyclinB/cdk1に関しては減少を起し、その結果、G2/M期の延長をもたらすとの結論を得た。G2/M期が有意に延長するという知見は、他のG2/M期に働く抗癌薬との併用に於いて相乗効果をもたらすことが期待され、その点について、G2/M期に働く抗癌剤であるエトポシドとビタミンK3の併用効果を検討した結果、ビタミンK3はエトポシドの効果を相乗的に増強することが判明した。一方、S期に働く、イリノテカンについては、ビタミンK3のS期を短縮する効果により、相乗効果は認められなかった(Biol.Pharm.Bull,31(6)in press)。さらにビタミンK3の臨床応用を目指して、毒性を示さない濃度のVK3とビタミンC(VC)を併用することで、大腸癌細胞株に対して短時間から相乗的な細胞毒性を示し、その細胞毒性はVK3単独処理とは異なり特徴的な形態変化を伴うことを明らかにした。その際、細胞毒性を引き起こす要因には活性酸素種(ROS;reactive oxygen species)が関与していることが示唆され、 VK3/VC併用による細胞毒性機序にはVK3単独による細胞毒性機序と同様に、apoptosisが関与していることが示唆された。本研究によりVK3/VC併用も、また、大腸癌患者に対する抗癌剤としての使用を期待できる結果となった。また、生体の必須物質であり、経口投与可能なvitamin類を使用していることから、詳細な作用機序についてのさらなる検討を行うことで、重篤な副作用を回避でき、利便性の高い新規の薬物療法としての使用が期待でき、今後、この点に関し、臨床研究を行う必要があると考えている。
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