研究概要 |
多剤耐性の機構として,P-glycoprotein(P-gp),MRP,あるいはBCRPなどのATP依存的な異物排出ポンプの発現誘導が考えられている。本研究では,これら異物排出ポンプの克服剤(阻害剤)を天然植物から探索するとともに,化学的修飾を加えその効果を増強し,より有効でかつ安全な多剤耐性克服剤を創成することを目的にしており,関連する研究において,以下の知見を得た。 1)クルクミン類,グアバやツルダチスズメナスビのエタノール抽出物を用い,そのP-gp阻害活性を,Caco-2細胞やラット消化管を用い検討したところ,前2者は,強いP-gp阻害活性を示すことを明らかにした(Junyaprasert, et. al.,Phytother Res.,20,79-81(2006))。 2)バンウコン根茎抽出物のP-gp機能阻害効果を培養細胞で検討し,フェノール基がメトキシ基になっているフラボン化合物が特に強い阻害活性を示すことを明らかにした(Patanasethanont, et. al.,J Pharmsci.,96,223-233(2007)。これ等の知見に基づき,ダイズイソフラボンであるゲニステインのメトキシ化誘導体を新規に合成し,そのP-gp阻害活性等について検討したが,溶解度が極端に減少してしまうなど,さらなる検討が必要である。 3)関連する研究として,消化管にはP-gpなど異物排出ポンプが発現しているにも関わらず,何故消化管から多くのP-gp基質が吸収されるのか,あるいは臨床的にも経口投与で有効なのかについて検討した結果,そのような薬物の場合,P-gpが殆ど発現していない消化管上部から吸収されていることが明らかとなった。(Mori, et. al.,Pharmazie,in press.2008)。
|