研究概要 |
平成19年度の研究により、報告者らは諸条件の改良を加えて当該研究の目的としていた口蓋発生研究のためのin vitro解析システムの開発をほぼ達成した。このin vitro解析システムは、1)single palatal shelf suspension culture法、2)paired palatal shelves suspension culture法、3)gel matrix-coated single palatal shelf suspension culture法の3種の方法により構成される。1)は報告者らが2004年に発表した方法(Takigawa T. and Shiota K., Int. J. Dev. Biol. Vol48、 pp307-317)をさらに改良したものであるが、2)および3)は当該研究により新規に開発したものであり、これらを組み合わせて使用することによって効果的に口蓋突起の癒合に必要な口蓋突起内側縁上皮細胞(MEE細胞)の最終分化能力を解析することができる。報告者らは、実際にこれらのin vitro解析システムを使用して、野生型マウス系統(C57BL/6J,129/Sv, FVB/N, SJL/J, ICR)およびラット系統(Sprague-Dawley, Wister Hannover/RCC)胎児のMEE細胞の最終分化能力を調べ、その能力に系統差および種差が存在することを明らかにした。特にMEE細胞の上皮-間葉形質転換能力の解析手法としては、これまでに報告されてきたいずれの方法よりも、再現性および実用性の点ではるかに優れていることが判明した。また、MEE細胞の上皮-間葉形質転換能力の野生型マウス間の系統差は、TGFβ3ノックアウトマウスホモ胎児が示す口蓋裂表現型のマウス系統差と相関していることが示唆された。
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