ラット10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、15.5日胚および18.5、20.5日齢胎児を用いて、肝芽組織における諸分子の発現を免疫組織化学法により検討した。肝芽細胞はαフェト蛋白質およびサイトケラチン18を用いて同定し、間葉細胞はビメンチンを用いて同定した。 肝初期発生過程(10.5から12.0目胚)においてEカドヘリンとNカドヘリンの発現に関して検討した。 Bカドヘリンは肝憩室を含む前腸内胚葉上皮細胞には強い染色として認められたが、横中隔内に存在する肝芽細胞では染色が著明に減弱していた。Nカドヘリンに関しては、 Eカドヘリンとは逆に前腸内胚葉上皮細胞には染色が認められなかったが、横中隔に存在する間葉細胞と肝芽細胞の両者に染色が認められた。Eカドヘリンの染色は12.5日胚以降、再び肝芽細胞に認められるようになった。Nカドヘリンの染色は胎生期を通じて肝芽細胞および胎児肝細胞に認められた。また11.5日胚の横中隔の微細形態を、電子顕微鏡を用いて観察したところ、横中隔内の肝芽細胞間に不完全ながら、接着結合を始めとする細胞間接着装置の存在が確認できた。免疫電顕(post-enmbedding法)の手法でNカドヘリンの局在を検討したが、残念ながら有意な染色像は得られなかった。 基底膜成分を分解することが報告されているmatrix metalloproteinase(MMP)2、MMP9、MMP14の発現を10.5から12. 0日胚において検討した。今回検討したMMPのすべてに関して肝憩室上皮および横中隔内の細胞に有意な染色は認められなかった。 上記のデータを第7回日米合同組織細胞化学会議と第112回日本解剖学会総会で報告した。
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