研究概要 |
前立腺癌等に対するホルモン治療薬として実用化されているLHRH誘導体は持続的投与することで性腺刺激ホルモン分泌を強く抑制する。本研究では、このLHRH誘導体の持続投与によって生じる性腺刺激ホルモン産生細胞の変化を微細構造と機能の両面から検討しており、平成19年度までに、LHRHアゴニストであるleuprorelinがアゴニスト作用とLHRH受容体の不応化誘導の相乗作用で同細胞からの性腺刺激ホルモン分泌を強力かつ効率的に抑制すること、および、leuprorelinが性腺刺激ホルモン産生細胞の微細構造に与える影響が可逆的であることを明らかにした。 この研究成果を踏まえて、平成20年度にはさらに、ホルモン生合成及び修飾の場である粗面小胞体やゴルジ装置に対するleuprorelin持続投与の影響も視野に入れて検討した。その結果、leuprorelin徐放性製剤を投与開始1日後から4日後までの間に、性腺刺激ホルモン産生細胞内では、粗面小胞体が核膜から伸展して増生し網状の塊を形成し、同時にゴルジ装置の層板が断片化する像が頻繁に観察された。これらの所見は同剤投与開始から7日後までに消失し、以降は同剤の効力が失われる28日間後まで、対照群と比較してゴルジ装置、粗面小胞体の発達は悪かった。以上の所見より、LHRHアゴニストであるleuprorelinが早期効果で性腺刺激ホルモン産生細胞を過剰に刺激する時期には、一過性に分泌蛋白合成の場である粗面小胞体の量を増やす細胞内応答が起こり、その結果ゴルジ装置への膜供給が一時的に不足することが示唆された。以上の研究結果は、研究発表欄に記載した学会(日本解剖学会・第114回全国学術集会, 2009年3月、岡山)のシンポジウムで報告した。
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