研究概要 |
膜骨格関連蛋白の一つであるProtein4.1は、網目を形成するスペクトリン、アクチン蛋白と、また、細胞膜内貫通蛋白質とも結合している。このProtein4.1が4つのファミリー蛋白(4.1R,4.1G,4.1N,4.1B)をもつことが明らかとされ、私たちは、とくにProtein4.1Bと4.1G特異抗体を用いて、正常マウスおよびラットの腎臓,腸管,膵臓,精巣,中枢および末梢神経系における超微形態学的局在を明らかにしてきた。 本研究の目的は、Protein4.1B遺伝子欠損マウスを作製し、すでに報告してきた腸管を含むProtein4.1Bが発現している組織臓器において、光学および電子顕微鏡観察を含む形態と機能解析を行うことである。形態の観察のためには、通常の固定法、および急速凍結ディープエッチング・レプリカ法、生体内凍結技法を用いて、Protein4.1Bの細胞膜裏側での構造および血流を保つ生体での組織構築を3次元的に可視化し、野生型マウスとの比較によって機能形態学的変化の解析を目指している。 そのために本年度は、遺伝子欠損マウスの作製とそのマウスラインの確立を行った。Protein4.1B遺伝子欠損マウスの作製は、1.ターゲティングベクターの作製、2.ES細胞の選択、3.キメラマウス作製、4.F1ヘテロマウス作製とジャームライントランスミッション確認、5.交配によるホモマウスを独自に行い、Protein4.1B蛋白が個体レベルで欠損していることを確認した。そこで当初予定した本年度の計画に達し、現在このProtein4.1B遺伝子欠損マウスを用いた解析を始めている。これらは、これまで報告してきた細胞・組織・臓器について、光顕、電顕形態学的変化および生理学的手法を用いて、正常および病態モデルにおける解析である。 一方、動的機能形態学的解析のための手法の研究として、生体内物質を血流維持したまま保持できる「生体内凍結技法」を行った後、その組織細胞内での部位を免疫組織化学的およびラマン顕微法によって可視化して解析できることを明らかにした。例えばこの方法を用いて、網膜における光応答におけるロドプシン蛋白構造変化について、時間分解能を高めて解析した。
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