課題「プロテイン4.1B(以下4.1B)遺伝子欠損マウスを用いた個体レベルでの機能形態変化の研究」の最終年度にあたる本年度は、4.1B遺伝子欠損(変異)マウス作製を完了(遺伝子、蛋白レベルにて欠損を確認)、欠損マウスのC57BL6J系統への戻し交配も行い、私たちが見出したマウス副腎髄質内分泌細胞における4.1Bの発現と局在について野生型マウスと比較した解析結果を国際誌に発表した。4.1Bと結合する細胞膜内蛋白TSLC1が副腎髄質内分泌細胞膜に局在し、免疫沈降法により4.1Bとの結合性することを見出した。このTSLC1は4.1B欠損マウスにおいても細胞膜に局在することより、4.1Bの欠損では副腎髄質の機能には野生型と大きな違い(表現型)をもたらさない理由として考えられた。この部位には、4.1ファミリー蛋白である4.1Nの局在があることもわかり、これらが相互に補填する可能性があり、今後の検討が必要である。さらに光学・電子顕微鏡試料作製のために、通常の化学固定法はもとより急速凍結技法、ディープエッチング・レプリカ法(電子顕微鏡で3次元可視化)および生体内凍結技法による最新の形態学的解析を行った。急速凍結ディープエッチング・レプリカ法を用いて、膀胱上皮伸縮に応じた細胞膜移動分子機構としてダイナミン蛋白の発現と局在を見出し、その機能阻害による形態変化を発表した。また生体内凍結技法を用いた化学固定や酸素欠乏の影響を減らし時間分解能を高めた解析について、免疫組織化学法、低温下共焦点ラマン顕微法によるマウス腸管・肝臓の流動赤血球酸素飽和度に対応したラマン波形(ヘモグロビン酸素結合状態分子構造を捉える)の生体内の状態を保持した定量解析法を新たに見出し、国際誌に発表した。
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