研究課題
基盤研究(C)
上皮細胞のタイト結合(TJ)をフリーズフラクチャー法で観察すると、膜内粒子から成るストランドがP面に、対応する溝がE面に見られるが、その溝には膜内粒子はほとんど見られない(P型ストランド)。一方、末梢の細静脈の内皮細胞のTJでは、膜内粒子がP面ではなくE面の溝に鎖状に並んでいる(E型ストランド)。TJストランドを形成する膜蛋白質であるclaudinは、現在までにマウスやヒトで24種類が同定されている。claudinは、N末端とC末端を細胞質側に向けて細胞膜を4回貫通し、2つの細胞外ループ(ECL1,ECL2)と1つの細胞内ループを持っている。フリーズフラクチャー法で観察されるTJの形態および機能は、発現しているclaudinの組み合わせと比率により決定されると考えられている。我々は、claudin-1のC末端にmyc-tagを付与した1CLmyc、1CLmycのECL2の151P152Lを欠失する1CLΔPLmyc、およびclaudin-10をMDCK IおよびII細胞にて発現し、TJの形態と機能の変化を調べた。その結果、claudin-1は本来P型ストランド、1CLΔPLmycはP型とE型の中間の形態のストランド、claudin-10はE型ストランドを形成することがわかった。これらの細胞の細胞間電気抵抗値を調べると、claudin-1-mycと1CLΔPLmycでは抵抗値が有意に上昇したが、claudin-10では顕著に減少した。claudin-2はclaudin-10と同様にE型ストランドを形成し、MDCK II細胞にclaudin-2を発現すると細胞間電気抵抗値が顕著に減少することが知られている。これらのことから、(1)E型ストランドを形成するclaudinをMDCK細胞にて発現すると電気抵抗値が減少すること、(2)ECL2の変異により誘導されたTJストランドの形態変化は、電気抵抗値をむしろ上昇させることがわかった。
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