新生期に人工エストロゲンであるdiethylstilbesrol(DES)を投与したマウス(DESマウス)の子宮においては、子宮腺、血管、間質および平滑筋層の発達が阻害される。この形態形成異常は細胞外基質の蓄積と血管の形成不全が主たる原因であることが以下の実験結果から示唆された。 1)collagenの蓄積 (1)DESマウスにおいては、4日齢および10日齢のマウスともcollagen線維が蓄積していることが、Malloly-Azan染色および免疫組織化学の結果、明らかになった。特にcollagen-I、IIが間質で増加していた。 (2)DESマウスにおいてはcollagenの分解酵素であるmatrix metalloproteinase(MMP)-2の発現量が減少していることが判明した。 間質におけるcollagenの蓄積は、間質での上皮細胞と血管の内皮細胞の増殖を抑制し、子宮腺形成と血管新生を阻害するものと考えられる。 2)血管新生に関与する因子の発現 (1)DESマウスにおいては免疫組織化学の結果、血管内皮増殖因子(VEGF)の発現が間質細胞で減少し、上皮細胞で増加していることが明らかになった。 (2)上皮細胞で合成されたVEGFは主として管腔へ分泌され、間質や筋層での血管新生に関与していないことが示唆された。 (3)血管におけるVEGF受容体(VEGF-R2)の発現量はDESマウス、対照マウスとも顕著な差は認められなかった。 (4)結合組織の合成を促し、VEGF活性を阻害する結合組織増殖因子(CTGF)の発現量はDESマウスで増加していた。 DES投与により間質におけるVEGF濃度が減少し、血管新生が阻害されていると考えられる。血管量の減少により酸素や栄養の供給が低下し、間質や平滑筋層の細胞の増殖が抑制されるものと思われる。
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