研究概要 |
カベオラ膜輸送を利用して,細胞内に侵入するウイルス種は潜在的に多いと考えられている.しかし,その詳細は明らかになっていない.特にコロナウイルスのように,エンベロープウイルスの細胞内侵入に利用されるカベオラ膜輸送については,全くわかっていないと言える.本研究は,動態解析手法を用いて,ウイルス侵入に利用されるカベオラ膜輸送の詳細を明らかにすることを目的とする. 本年度は,リアルタイム解析を行うため,コロナウイルスの各成分ごとに異なる蛍光波長で標識した,蛍光標識コロナウイルスを作製するための実験から研究を開始した.まず,各ウイルス構成タンパク質に蛍光タンパク質を癒合させた各種蛍光ウイルスタンパク質の発現プラスミドを構築した.次に,トランスフェクション効率とウイルス産生能ともに高い細胞株のスクリーニングを行ったが,両方の特性を併せ持つ細胞株を見つけることが,残念ながら出来なかった.そこで,コロナウイルス産生能の高いL132細胞を用いたstable transfectantを確立することにした.ウイルスエンベロープを標識するために,ECFP, EYFPをタグしたS-protein(エンベロープタンパク質)を,ヌクレオカプシドを標識するために,ECFP, EYFP, DsRed monomerをタグしたN-protein(ヌクレオカプシドタンパク質)を,それぞれstableに発現するL132細胞を多数確立した.現在,これらの細胞に非標識ウイルスを感染させ,蛍光ウイルス産生のための至適条件の検討を行っている. また,ウイルス侵入時の超微細構造を免疫電顕用いて解析する必要があるため,ウイルスエンベロープに対する抗体を現在作製中である.
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