研究概要 |
全身性の炎症時の頻脈にプロスタグランジンF_<2α>(PGF_2α)及びトロンボキサンA_2(TXA_2)が関与していることを2005年に報告している(Takayama et a1, 2005).その研究結果に基づき、本研究ではモルモット心臓より単離した洞房結節細胞を用い,これらエイコサノイドの心拍促進作用機序をパッチクランプ法にて解析し、以下の結果を得た.1)電流固定下ではPGF_<2a>及びI-BOP(TXA_2の安定型誘導体)は洞房結節細胞の発火頻度を濃度依存的に増加させ,その作用は50μM Ni^<2+>にて部分的に抑制された.2)I-BOPの心拍促進さようは、TP受容体の選択的阻害薬によりほぼ完全に抑制された.3)膜電位固定下では、PGF_<2+>及びI-BOPは低閾値活性型(>-60mV)Ca^<2+>電流振幅を増大させた.一方,高閾値活性型〈>-40mV)Ca^<2+>電流及び過分極活性型陽イオンチャネルには影響を与えなかった.4)90mMBa^<2+>をチャージキャリアとして記録した単一チャネル電流においては、I-BOPは活性閾値が深く単一チャネル振幅が小さな(約9pS)T型チャネルの開口確率を増大させたが、L型チャネルには影響を与えなかった.また、Isoproterenolによるβアドレナリン受容体刺激はL型チャネルの開確率を増大させたがT型チャネルには影響を与えなかった.5)過分極活性化陽イオンチャネル及び遅延整流KチャネルはI-BOPやPGF_<2α>の影響を受けなかった.以上のことから、エイコサノイドがT型チャネル活性を増大させることにより心拍促進効果を発揮することが示唆された.さらにエイコサノイドによるT型チャネル活性増大にはcAMP以外の細胞内シグナル伝達系が関与していることが示唆された.
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