研究概要 |
【目的】危険などのストレスを感知してそれをオレキシン含有ニューロンに伝える入力系の神経回路とそこで用いられている神経伝達物質を明らかにする事であった。 【方法】1)入力核の候補として分界条床核と扁桃体が適当かどうかを,それらを含む脳部位の局所電気刺激によって確認した。2)上記実験で得られた防衛反応惹起に最も有効な部位を薬物で刺激した時の循環・呼吸反応を,オレキシン含有神経細胞を特異的に破壊したマウスと野生型マウスとで比較した。3)分界条床核と扁桃体への刺激がオレキシン神経を活性化させるか否かを免疫組織化学的に検討した。4)背内側視床下部に各種の神経伝達物質受容体阻害剤を投与して分界条床核、扁桃体への刺激効果が減弱されるか否かを検討した。 【結果】1)マウスに於いても他の実験動物と同様に,分界条床核および扁桃体の局所への刺激によって血圧・心拍数・呼吸数・分時換気量の同時増加で特徴付けられる防衛反応が惹起された。2)オレキシン含有神経細胞特異的破壊マウスの分界条床核または扁桃体を刺激した時の防衛反応は,野生型マウスと比較して有意に減弱していた。3)分界条床核または扁桃体への刺激はいずれも,野生型マウスのオレキシン神経細胞を活性化させる事が免疫組織化学的に確認された。4)背内側視床下部にアトロピン,キヌレン酸,CRH阻害剤を投与すると分界条床核・扁桃体への刺激効果が減弱した。 【考察】ストレス防衛反応の循環、呼吸出力を担うオレキシンニューロンにストレス情報を伝達する入力源として,分界条床核および扁桃体が少なくともその一翼を担っている事が証明された。その神経回路で用いられている神経伝達物質は複数存在する事が推測された。
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