研究課題
基盤研究(C)
生理的血流状況(ずり応力下)での血栓形成の制御機構を明らかにする為に、血小板の粘着・凝集とPS発現に着目して生体内で血栓形成過程をリアルタイムに解析した。高ずり応力下においては、接着蛋白であるvon Willebrand Factor(vWF)は高次構造が変化し血小板と内皮下のコラーゲンの粘着を仲介するとされる。我々はvWF切断酵素(ADAMTS13)遺伝子欠損マウスと緑色蛍光蛋白発現遺伝子変異マウスのhybridoma(GFP-ADAMTS13^<-/->)を作成し、血管内皮細胞のWeibel Parade小体(W-P body)より分泌されるUltra large multimer vWFの血栓形成に及ぼす影響を検討した。(1)ADAMTS13-/-GFPではGFPに比較して、FeCl2による血管内皮傷害時のvWFが有意に長く、これに粘着した血小板数も多かった。(2)レーザー照射による血管内皮傷害部位における初期血小板血栓の形成に際し、ADAMTS13-/-GFPではGFPに比較してその大きさが有意に大きかった。(3)レーザー照射による血管内皮傷害部位における血小板血栓の中央にvWFの集積が認められたが、その量はADAMTS13-/-GFPとGFPで有意差を認めなかった。これらの事実より、ADAMTS13により切断されないultra large multimer vWFは、内皮傷害部位における血小板の粘着と、初期血小板血栓の形成を促進していると考えられた。その後の血栓安定化にはvWFの集積が不可欠であり、これにはvWFの長さを影響しないと考えられた。ADAMTS13活性が低下することにより発症する血栓性血小板減少性紫斑病の病態を理解する上で重要であり、播種性の微小血栓は形成しやすくなるものの、血栓症の原因となる巨大血栓の形成にはいたらないという臨床症状を説明するものである。
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