研究課題
基盤研究(C)
消化管菅腔内からの刺激により消化管運動や粘膜上皮でのイオン輸送は容易に変化することが知られている。大腸には、400種類以上の常在細菌が存在し、消化管の中に一つの生態系を構築している。最近の研究から、これら常在細菌と消化管との相互作用が消化管の機能を維持するために重要であることが明らかにされつつある。申請者は、消化管内腔に存在する腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸を一つの化学刺激と考え、菅腔内からの化学刺激により大腸運動や粘膜からのイオン輸送が、どのように制御されているかを研究し、短鎖脂肪酸が大腸運動に影響を及ぼすことを明らかにした。しかしながら、大腸菅腔内に存在する腸内細菌により産生される短鎖脂肪酸がどのような機構により受容され大腸機能に影響を与えているのかは不明のままであった。ところが、2003年になり、Gタンパク共役型オーファン受容体が発見され、これが短鎖脂肪酸の受容体であることが明らかにされた。このような背景を踏まえて、本年度は新規に発見された短鎖脂肪酸受容体の消化管での発現について検討を加えた。短鎖脂肪酸の受容体としてはGPR43とGPR41が報告されている。まず、GPR43とGPR41の消化管内での発現についてreal time RT-PCRにより検討した。その結果、GPR41の発現はGPR43に比較して各部位とも極めて弱いことが観察された。そこで、本年度はGPR43について詳細な検討を加えた。GPR43は胃から下部大腸までの粘膜に発現していることが観察された。さらに、小腸と大腸を分けて比較すると、小腸では回腸末端で多く、大腸では下部大腸でその発現が高いことが観察された。また、粘膜と筋層とを比較した場合、粘膜に多く発現していることが観察された。さらに、免疫組織化学によりGPR43は大腸粘膜上皮組織では、PYY含有腸内分泌細胞に発現している事を明らかにした。
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