研究課題
昨年度は、短鎖脂肪酸受容体GPR43の発現分布についてラットを用いて詳細に検討し、GPR43はPYYを含む腸内分泌細胞に発現している事を明らかにした。本年度は、さらにGPR43の組織内分泌についてヒトの組織を用いて検討した。その結果、ヒトにおいてもGPR43の分布は基本的にはラットと同じであることが明らかとなった(J. Mol. Histol.,38:135-142,2008)。本年度は、GPR43に続きGPR41の組織内発現についても検討を加えた。材料にはヒトの大腸を用いた。大腸の全層を用いてRT-PCR法によりGPR41の発現を検討した。GPR41はヒトの大腸(上行、横行、下行結腸及び直腸)で発現していることが観察された。さらに、Western Blotting法によりタンパク発現についても検討したところ、タンパクの発現は粘膜層のみに発現していることが観察された。この結果から、GPR41はGPR43と同様、粘膜上皮に発現していることが考えられた。また、免疫組織化学によりGPR41もGPR43と同様にPYYを発現する腸内分泌細胞に局在することが明らかとなった。生理学実験としては、短鎖脂肪酸の大腸粘膜イオン輸送に及ぼす影響についてUssing Chamber法により検討した。その結果、短鎖脂肪酸は、モルモット、ラット及びヒトの下部大腸において粘膜側からの投与によりイオン輸送に影響を及ぼすことが明らかとなった。短鎖脂肪酸の粘膜側への投与により短絡電流は用量依存的に増加した。短絡電流は2相性の反応を示し、初めは下向きの続いて上向きの反応を誘発した。下向きの電流の増加は、各種阻害剤を用いた検討からカリウム分泌によるものであり、上向きの電流はクロライドイオン分泌によるものであることが示唆された。また、各種神経阻害剤を用いた検討から、カリウム分泌は短鎖脂肪酸の粘膜上皮細胞に対する直接作用であり、またクロライドイオン分泌は腸内神経系を介する反射作用によるものであることが示唆された。さらに、クロライド分泌にはコリン作動性神経の関与が示唆された。
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