モルモット腸間膜動脈から急性単離した内皮細胞層標本に通常のwhole-cell clamp法を適用した。前年度はAChにより活性化されるK^+およびC1^-電流の性質について研究して一定の成果を得たが、実際はAChの内皮細胞生理的刺激物質としての可能性は低い。そこで今年度はより生理的な刺激物質として注目されているATPを使用し、それによって活性化される電流系がAChの場合と同じかどうかを研究した。その結果、ATPでもAChと同様の電流系が活性化されることが確かめられた。その他、前年度にC1^-電流を同定する際、niflumic acidなどのいわゆるC1^-チャネル遮断薬に対する感受性を確認したが、同時にniflumic acidなどにより遮断されないはずの電流成分(K^+電流)もずいぶん小さくなる現象が観られた。この原因を調べるためにギャップ結合に対するniflumic acidの影響を観たところ、内皮細胞のギャップ結合も他の標本での報告同様niflumic acidで遮断されることが判明した。この実験で使用したような多細胞標本では、niflumic acid存在下でギャップ結合の電気抵抗増加が起きると、観察される電流が小さくなるため、K^+電流がniflumic acidで遮断されたように見える現象が起きていたと結論された。
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