血管内皮細胞のアセチルコリン(ACh)に対する膜電位応答は、持続性の過分極から一過性過分極に持続性脱分極が続く反応まで報告や使用された標本により異なるが、その理由はまだ解明されていない。そこでモルモット腸間膜動脈から急性単離した内皮細胞層標本にperforated or conventional whole-cell clamp法を適用し、AChおよびATPで誘発される電流を研究した。内皮細胞は平滑筋層と連絡した状態では通常の静止膜電位を示すが、単離された状態では静止膜電位が-10mVより浅くなった。内皮細胞同士は豊富なギャップ結合で連絡しているので、このままの多細胞標本では膜電位の制御が不可能であった。そこで先端直径が150μm程度のガラスピペットを標本に押しつけて円周状に細胞を破壊し、小数の細胞を周りの細胞と電気的に隔離することでパッチ電極による細胞膜電位固定が可能になった。この標本では、AChはK+およびCl-電流を同時に活性化した。K^+電流はcharybdotoxin と apaminにより完全に阻害され、IK_<ca>およびSK_<ca>チャネルに依ることがわかった。C1^-電流はtamoxifen、niflumicacid、DIDSで部分的に抑制され、Ca^<2+>活性化C1^-チャネルに依ることがわかった。細胞内C1^-濃度が低い場合は1分間のACh投与中K^+コンダクタンスは徐々に減少し、一方C1^-コンダクタンスは持続した。これによって持続性過分極反応が惹起されると考えられた。細胞内C1^-濃度が高い場合は、両コンダクタンスともACh投与中から急速に減少した。これが一過性過分極反応の原因と考えられた。このような細胞内C1^-濃度の違いがACh応答の違いの一因である可能性がある。また、ATPで活性化される電流系はAChのものと同じであった。
|