本研究は、脳間質での細胞外液および代謝物の動態、すなわち動脈側の毛細血管や脈絡叢から発し、脳神経細胞・神経膠細胞を灌流し、静脈側の毛細血管やクモ膜顆粒に終わる一連の水・代謝物の流れを解析することを目的とする。 平成17年度は、1)上衣細胞上皮を介しての水透過性(Pf)と、2)脳間質での体積流(Fv)をラットを用いて測定を試みた。脳実質内にカテーテルを留置し、1-3μLの緩和試薬を注入し、その後の緩和試薬の動きをT1強調MRIにより1分間隔で測定を行った。その結果、大脳皮質においては、鼻側では尾側から尾側へと向かう体積流の存在が確認できた。一方、尾側では、逆方向に動くかのようなデータが得られた。脳梁直上にカテーテルを置いた場合は、脳梁に沿い前後方向に早い移動が見られた。皮質実質内に比べて移動が著しく速いため、造影剤の注入により脳梁と皮質との間質間隙がマクロスコピックに開かれてしまった可能性も示唆された。造影剤の注入方法をできるだけ少量にし脳実質への干渉を少なくできるように試行錯誤をおこなった。ラットが4.7Tの高磁場内にいるために少なくとも1mのラインを介して注入せざるを得ず、未だ1μL以下の注入実験には成功していない。微少量の注入法の確立が平成19年度の課題として残っている。 マウスでの実験系の確立を平行して行った。7TMRマイクロイメージング装置用に、心電図や呼吸のバイタル管理に必要な心呼吸トリガーユニット(設備備品費)を揃え整備し、安定したバイタル管理を行えるようになった。しかしながら、この装置では、磁石内試料空間が狭小なために、脳室や脳実質にカテーテルを挿入したマウスは設置できなかった。このために、血液経由で脳脊髄液を介して緩和試薬を脳実質内に導入し、水の体積流の測定を行うことを試みている。現在、適切な緩和試薬を探索中である。
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