研究課題/領域番号 |
18590218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岸 恭一 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究科, 教授 (80035435)
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研究分担者 |
二川 健 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究科, 助教授 (20263824)
安井 夏生 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究科, 教授 (00157984)
根本 尚夫 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究科, 助教授 (30208293)
大栗 幸子 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究科, 技術職員 (50380085)
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キーワード | ユビチキン化阻害剤 / オリゴペプチド / 筋萎縮 / ユビチキンリガーゼ / オリゴペプチド大量発現法 |
研究概要 |
これまでの研究で、私達は、寝たきりなどによる運動器の廃用性萎縮においてCbl-bと呼ばれるユビキチンリガーゼ(分解すべき基質にユビキチンを結合する酵素)が重要な働きをしていることを明らかにした。Cbl-bは、骨格筋や骨芽細胞の成長に重要なIGF-1の細胞内シグナル分子であるIRS-1(insulin receptor substrate-1)をユビキチン化し、その分解を促進するユビキチンリガーゼである。さらに、Cbl-b遺伝子を人工的に欠損させたマウスは、尾部懸垂による筋・骨萎縮が起こらないことも明らかにした。そこで、Cbl-bによるIRS-1のユビキチン化活性を阻害できれば、運動器の萎縮を予防できると考えた。Cbl-bはIRS-1のリン酸化チロシンを認識して結合するので、その結合を競合的に阻害できる物質をオリゴペプチドに求めた。Cbl-bによるIRS-1のユビキチン化を細胞なしで再現できる無細胞系のシステムを用いて、オリゴペプチドを検索した結果、2種類の合成ペンタペプチドと大豆蛋白質由来ペプチドのグリシニン画分が、IRS-1のユビキチン化を著明に阻害することを見出した(特許出願中)。合成ペンタペプチドはCbl-bによるIRS-1のユビキチン化とその分解をともに阻害できたが、グリシニン由来ペプチドはユビキチン化のみの阻害であり、その阻害効果も合成ペプチドの1000分の1程度であった。これらの阻害効果が、血清を含む培地中で失活しないことも確認した。一方、これらユビキチン化阻害活性を有するペンタペプチドの安価かつ大量生産法の開発も試みた。化学合成法では、動物実験に必要なオリゴペプチド(100g)を確保するのがとても難しい。そこで、大腸菌の蛋白質分解酵素で分解されにくいユビキチンのC末端に、ペンタペプチドを結合した発現ベクターを構築した。ユビキチンをAffinity精製した後、脱ユビキチン化酵素で切断することにより目的のペンタペプチドを得た。以上の結果より、ある特定の配列を持つオリゴペプチドが、ユビキチンリガーゼ阻害活性を有することがin vitroレベルにおいて証明された。ユビキチンリガーゼは様々な神経筋変性疾患の原因酵素であることが報告されており、治療薬としてその阻害剤の開発が期待されている。現在、このペンタペプチドの基本構造を用いて世界で最初の筋萎縮阻害剤(ユビキチンリガーゼ阻害剤)の開発も行っている。
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