1.小腸様細胞株Caco-2における核内受容体TR、GRの脱リン酸化シグナルを介した転写調節機構の検討: 小腸様細胞株Caco-2にp44/42MAPキナーゼ阻害剤を、甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンド(T3)あるいはグルココルチコイドホルモン受容体(GR)の合成リガンド(デキサメタゾン)と同時に投与すると、フルクトース輸送体GLUT5の遺伝子発現が相乗的に増大した。GLUT5遺伝子上流域におけるTRおよびGRの結合を、クロマチン免疫沈降法(ChIPアッセイ)によって検討したところ、GLUT5遺伝子の発現増大と平行して、TRα-1とGRの結合が増大した。免疫蛍光染色および共焦点顕微鏡の観察によって、p44/42MAPキナーゼ阻害剤の投与はGRのSer203の脱リン酸化を亢進させ、それとともに、GRの核移行が促進することが明らかになった。このとき、GLUT5遺伝子上流域に結合するピストンH3とH4のアセチル化が増大し、転写補因子の結合も増大した。 2.小腸細胞における核内受容体RXRのレチノイン酸シグナルを介した転写調節機構の検討: 未分化型小腸細胞IEC-6に9-cisレチノイン酸を投与すると、細胞性レチノール結合タンパク質(CRBPII)の遺伝子上流域に結合するヒストンH4のアセチル化が増大し、CRBPII遺伝子発現が増大した。 3.小腸における糖質シグナルによって発現が変動する遺伝子の網羅的解析: ラットに高糖質食あるいは低糖質食を摂取させ、マイクロアレイを用いて発現が3倍以上に変動する遺伝子を解析したところ、高糖質食によって誘導された転写/クロマチン関連遺伝子が52個見られた。この中には、甲状腺ホルモンのシグナルに関連する転写因子(TRα-2、Foxel、Thrsp)が含まれていた。
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