研究概要 |
1.ヒト小腸様細胞株C2BBe1におけるビタミンA吸収・代謝関連遺伝子の発現性について検討した。C2BBe1細胞株はCaco-2細胞株に比べ、β-カロテン開裂酵素(BCMO)や細胞性レチノール結合タンパク質タイプII(CRBPII)の遺伝子発現量が高く、その他のビタミンA吸収・代謝系の遺伝子も発現していることから、ヒトのビタミンA吸収・代謝研究において有用な小腸様モデル細胞株と考えられた。また、C2BBe1細胞の分化・成熟に伴い、これらの一連の遺伝子発現量が急速に高まっていた。特にBCMO1,CRBPIIおよびMTP遺伝子の発現変動は、核内受容体HNF-4αの発現パターンや結合活性とも一致しており、さらにHNF-4αを過剰発現させたC2BBe1細胞ではこれらの転写活性および遺伝子発現量も有意に増大を示していた。これらの結果から、HNF-4αはヒト小腸吸収細胞の分化・成熟過程のビタミンA吸収・代謝機能亢進において重要な転写調節因子のひとつであることが考えられた。 2.HNF-4は様々なリン酸化・脱リン酸化によりその転写因子としての機能が調節されている。本研究では、リン酸化によるHNF-4を介した小腸ビタミンA吸収・代謝遺伝子発現への影響について検討した。C2BBe1細胞のHNF-4α発現量、BCMO1およびCRBPII mRNA量はPKC依存的に顕著に低下した。一方C2BBe1細胞を細胞内cAMP誘導剤であるフォルスコリン、8-Br-cAMPやVIPで処理すると、BCMO1やCRBPII mRNA量、およびこれら遺伝子へのHNF-4αの結合活性はいずれも顕著に低下した。しかしリン酸化阻害剤を用いた検討から、これらの影響はPKAによるHNF-4のリン酸化でなく、cAMP依存的なMAPKによるリン酸化の可能性が考えられた。
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