老化促進モデルマウス(SAM)P8系の遺伝子発現の加齢変化促進現象は離乳期を境にはじまることを見出した。昨年度は、P8系マウスの加齢促進に関わる因子を明らかにする研究の一環として離乳前後のP8系マウス組織ついて正常老化型R1系マウスを対象とし蛍光標識二次元ディファレンス電気泳動法(2D-DIGE)によるプロテオーム解析を行った。その結果、肝臓に両系統で等電点の異なる分子量約14kDaのタンパク質が存在することを見出した。これらは同定の結果、肝臓型脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)であることがわかった。さらに、L-FABP等電点の系統差はcDNA塩基配列から1塩基多型に基づく1アミノ酸残基の違いによること、その位置がL-FABPの脂肪酸結合能部位に隣接することが明らかになった。そこで本年度は、L-FABP遺伝子多型が脂肪酸結合能に与える影響を調べるために、両系統のマウス肝臓からL-FABPをゲルろ過カラムクロマトグラフィー等で精製し脂肪酸結合能を比較した。精製した(>90%)L-FABPの[14C]-パルミチン酸(PA)の結合能は、R1系マウスに比べP8系でやや高い傾向にあったが統計的に有意でなかった。今後、L-FABPのステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸結合能および肝蓄積脂肪酸やL-FABP結合脂肪酸について解析を進め、L-FABP遺伝子多型と老化促進あるいは老化関連疾患との関連を明らかにしていく予定である。なお、現在、脳、腎臓、肝臓についての2D-DIGE解析から、少なくとも2種類のミトコンドリアタンパク質にP8系とR1系の間に等電点の差があることを見出しており、これらのタンパク質の同定を進めている。
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