寒冷環境下では体温を維持するために熱産生の促進がおきる。一方、病原体の感染によって誘起される発熱時にも熱産生の促進がおきる。寒冷時および発熱時の熱産生反応は脳によって制御されており、視床下部視索前野が体温調節中枢であることは広く認知されている。しかし、寒冷環境下と感染時とで熱産生がどの程度同一の機構で制御されているか、その統合の共通機構として視索前野のGABA感受性かつGABA作動性のニューロンが熱産生を制御しているという仮説を検証しようとするものである。ウレタン・クロラロースの麻酔したラットの呼気ガスをガス分析器に導き、熱産生の指標である酸素消費率を経時的に測定した。深部体温の指標として結腸温度、皮膚温度の代表として尾皮膚温を記録した。四肢より心電図を導出し心拍数を測定し、麻酔深度の指標ならびに交感神経系の活動指標の一つとした。ラットは脳定位固定装置に取りつけ、三連ガラスピペットを用いて圧微量注入法によりGABA、bicuculline、gabazine、PGE_2等の薬物溶液を20-100nl局所投与する下記の実験を行った。視索前野GABA感受性部位にGABA_A受容体拮抗薬であるbicucullineやgabazineを前投与すると、視索前野腹内側部にPGE_2を微量注入によって誘起される熱産生および静脈内にLPSを投与して誘起される熱産生反応はともにブロックされた。溶媒である生理食塩水を前投与しても影響がなかった。視索前野GABA感受性機構が発熱時の熱産生にも必要であることが分かった。
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