研究概要 |
ATP感受性K+(K_ATP)チャネルはKir6.xの4量体からなるポア成分にスルホニル尿素受容体(SUR)が附属蛋白として結合して機能することが明らかとなっている。各種臓器の細胞膜に存在するK_ATPチャネルの構成分子は,ノックアウトマウスを用いた機能的研究によって明らかにされてきた。虚血プレコンディショニングと呼ばれる内因性虚血心筋保護機構の成立には心筋細胞膜のK_ATPチャネルの活性化ばかりでなく,ミトコンドリア内膜に存在するとされるK_ATPチャネルの活性化が重要とされるが,その分子実体は確定していない。最近,細胞膜やミトコンドリア内膜ばかりでなく,核膜にもK_ATPチャネルが存在することを示唆する報告がなされているので,本研究はその構成分子や機能的役割を明らかにしようとした。市販のKir6.1およびKir6.2に対する抗体を購入し,心筋組織の免疫電顕によってその局在を明らかにしようと試みたが,その非特異的な結合が多く,これらのポア成分の細胞内の局在が明らかとならなかった。また,熊本大学薬学部中山教授らが独自に作成したKir6.1およびKir6.2に対する抗体を入手し,単離心筋細胞に対して染色を試みたが,やはり細胞におけるこれらの蛋白の局在を明らかにすることは出来なかった。心筋細胞の核膜のイオンチャネル活動記録においては単一チャネル電流記録が可能であったが,大部分のものはスルホニル尿素薬に反応しなかったこと,また,核包内のCa^<2+>シグナルを測定し,スルホニル尿素薬の反応を検討した実験において明らかな変化が認められなかったことから,核膜へのglibenclamide-BODIPY-FL結合の陽性所見から明らかになったように,心筋細胞の核膜にK_ATPチャネルが存在することは完全に否定できないが,核包内Ca^<2+>シグナルには大きな影響を与えないことが示唆された。
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