研究概要 |
敗血症性ショックおよび多臓器不全は,敗血症患者の致死的な原因とされている.血管内皮細胞のアポトーシスは敗血症の病態機構に重要な役割を演じているかもしれない.Caspase-8はデス受容体を介したアポトーシス回路の先端にあると考えられており,一方casapase-3はアポトーシス・カスケードの"eifector"プロテアーゼであるとされている.合成した短鎖干渉RNA(siRNA)は,RNA干渉により特異的に遺伝子発現を抑制する.そこで,平成18年度では,多菌性敗血症のマウズモデルを用いて,caspase-8/caspase-3siRNAsの治療効果を検討した.多菌性敗血症はBALB/cマウスを回盲部結紫・穿孔により腹膜炎を起こさせ誘発した(CLP).生体内へのsiRNAデリバリーは,CLP後10時間にtransfectionreagent (Lipofectamine2000)を用いて行った.ネガティヴ・コントロールとしてノンセンスsiRNAを投与したマウスを用いた. Caspase-8/caspase-3siRNAs投与により,大動脈において敗血症誘発により著明に増加したcaspase-8とcaspase-3の発現は強く抑えられた.このsiRNAs処置により,敗血症大動脈にみられるDNAラダー形成やプロアポトーシス蛋白Badのリン酸化の低下は妨げられた.電顕像において,敗血症大動脈での内皮細胞の形態学的異常は,caspase-8/caspase-3siRNAs投与により改善した.CLPにより通常は2日以内で死亡したが,caspase-8/caspase-3siRNAsで処置しておくと全例CLP施行後も7日以上生存した.本年度の研究により,siRNAsでのcaspase-8とcaspase-3の遺伝子を封じることが多菌性敗血症に対して顕著な防御作用を示すことが明らかとなった.さらに,血管内皮細胞アポトーシスを防ぐことが,少なくとも部分的には,敗血症に対する本siRNAsの効果を脱明するかもしれないことが示唆された.
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